千葉地方裁判所 昭和40年(手ワ)45号 判決 1966年3月24日
原告 蜂谷利雄
被告 小島鉄工株式会社
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は「被告は原告に対し、金七〇万円および右金員に対する昭和四〇年七月八日以降支払済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め被告会社代表者は「原告の請求を棄却する」との判決を求め請求原因として次のとおり陳述した。
一、訴外株式会社赤原鉄工所代表取締役赤原久市は昭和四〇年五月七日、額面七〇万円、支払期日昭和四〇年七月七日、支払地ならびに振出地川崎市、支払場所第一銀行川崎支店、受取人小島鉄工株式会社と記載し、提出人赤原鉄工所取締役社長赤原久市と記名捺印した約束手形を被告小島鉄工株式会社に交付して振出し、その際振出日欄は白地のままであった。
二、被告会社代表取締役小島英次郎は昭和四〇年五月八日右手形に小島鉄工株式会社代表取締役小島英次郎と記名捺印し、原告に裏書譲渡した。
三、原告は右約束手形を昭和四〇年七月七日支払場所において支払のため呈示したが支払を得られなかった。
四、原告は昭和四〇年一〇月一四日右約束手形の振出日を昭和四〇年五月七日と記載し補充したので、原告は額面七〇万円、支払期日昭和四〇年七月七日、支払地および振出地川崎市、支払場所第一銀行川崎支店、振出日昭和四〇年五月七日、振出人株式会社赤原鉄工所取締役社長赤原久市、受取人小島鉄工株式会社、第一裏書人小島鉄工株式会社代表取締役小島英次郎、被裏書人蜂谷利雄と順次記載のある約束手形一通を所持している。
よって被告は原告に対し、金七〇万円および右金員に対する昭和四〇年七月八日以降支払済に至るまで年六分の割合による金員を支払う義務がある。
被告会社代表者は、答弁として訴外株式会社赤原鉄工所が本件約束手形を振出し、被告会社が右約束手形を原告に裏書したことは認めると陳述した。
理由
訴外株式会社赤原鉄工所が振出日白地の約束手形を被告会社宛振出し、被告会社が右手形を原告に裏書した事実は当事者間に争いがない。而して原告は本件手形の振出日を昭和四〇年一〇月一四日に補充した旨自認しておるので、原告が支振呈示をしたと主張する昭和四〇年七月七日においては、本件手形は振出日未補充の手形である。約束手形の振出日は手要件であり、振出日の記載を欠いた約束手形は無効である。したがって、振出日未補充の約束手形による支払のための呈示は無効であって、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡って有効になるものではない。したがって、原告が本件手形について振出日未補充のまま昭和四〇年七月七日にした呈示は、被告会社に対する遡求権を保全する効力を有しないから、原告の被告に対する請求は理由がないので棄却し、主文のとおり判決する<以下省略>。